すべての人が楽しめるファッションを!「TURTLES PLUS」が目指すこれからのアパレルすべての人が楽しめるファッションを!タートルズプラスが目指すこれからのアパレル
セレクトショップにありそうな、カジュアルでスタイリッシュなお洋服。
この服、じつは随所に秘密が隠されています。その秘密とは…。
「TURTLES PLUS(タートルズプラス)」ブランド代表の井上夏海(いのうえなつみ)さんにお話を伺いました。
TURTLES PLUS(タートルズプラス)とは
井上さん:同ブランドは、2024年8月に誕生したアパレルブランドです。
障害のある人、ない人、マイノリティやマジョリティの境界線をなくしていくことをミッションとし、服は障害者を含むすべての人々がファッションを通じて自己表現を楽しめるようデザインされているのが特徴です。現在はオンラインでの予約販売を中心におこなっています。
これまでも障害の有無にかかわらずファッショナブルで使いやすいことを追求したランジェリーブランド「A on C(エーオンシー)」を展開していましたが、今回展開する「TUTLES PLUS(タートルズプラス)」はアパレルブランドとなります。
「TUTLES PLUS(タートルズプラス)」はモノづくりを15年以上にわたりおこなってきたレディースファッションのプロフェッショナルである株式会社ビクトリーで、私がAonC(エーオンシー)時代に培った障害者向けアパレルに関する知識を統合し立ち上げました。
また、ビクトリーはこの想いを広めるために、教育機関でインクルーシブ授業をおこなったり、中国にも法人を持つことから、日本国内だけでなく中国でもインクルージョンファッションを広めるべく東華大学(とうかだいがく)との協業をしたりと、幅広く活動をしています。
アパレルを通して心の境界線をなくしたい
井上さん:日本では障害者に関するさまざまな制度が整いつつありますが、その一方で人々のマインドはいまいち変わっていないと感じています。
例えば海外では車いすユーザーと会うと「その車いす、かっこいいね!」と気軽に声をかけている光景に出会います。しかし日本では声をかけるどころか、どこか特別な視線が向けられることもしばしば。
商品も、障害者用となると機能性ばかりが重視されてデザイン性は二の次となりやすいイメージがあります。障害があってももっとおしゃれしてもいい。そこで障害の有無にかかわらず着られるデザイン性の高い服をつくりたいと思い、このブランドを立ち上げました。
障害と一言で言ってもさまざまですが、今回は車いすユーザーにも着やすいユニセックスの洋服を、当事者の声を盛り込みながらデザインしています。
アパレルがやりたかった、というよりはアパレルを通して障害やマイノリティに対する心の境界線をなくし、社会のマインドを変えたい。これが目的です。
井上さん:「A on C(エーオンシー)」のときからおこなっている当事者へのヒアリングは、最初はSNSで、あるワードで検索して出てくる車いすユーザーに片っ端からダイレクトメールを送ってコンタクトをとっていました。
通常であれば怪しまれてお返事をいただけないこともあるようですが、わたしからのメールが超長文かつ資料もつけて送っていたため「この人、本気だ」と熱意を受け取ってもらえたようです。
そうして当事者にヒアリングしてあがってきた課題をひとつずつ解決していき、これらの商品が誕生しました。
今回は形がきれいなダンボールニットと、動くと色合いの変わるナイロンという異なる素材を組み合わせたジップアップパーカーとスエットパンツを例に紹介します。
機能×異素材(いそざい)ジップアップパーカー(19,800円)
ジップアップパーカーは、胴と腕の部分が異なる素材になっていてスタイリッシュなデザイン。ユニセックスで着られるカラーリングなのも特徴です。
擦れにも強い素材を採用
この素材選びにも秘密が。とくに車いすユーザーの場合、腕の部分が擦れてしまい素材が傷んでしまいがち。素材を摩擦に強い素材に変えることによってこの問題をファッショナブルに解決しています。
ジッパーふたつの秘密
フロントのジッパーが上下2箇所についているのは、すわりっぱなしでもスタイリッシュにみえるようにとの配慮から。
下のジッパーを少し開けることで、座った姿勢のときの腹部のもたつきが解消されてスッキリ見えます。
機能×異素材(いそざい)スエットパンツ(17,600円)
こちらもダンボールニットと、ももからひざ下にかけて動くと色合いの変わるナイロンを組み合わせた、トレンド感のあるカーブシルエットが特徴のスエットパンツ。ジップアップパーカーとセットで着られます。
“跳ね返り問題”も素材を変えて解決
まず、こちらも素材は裾にかけてダンボールニットとナイロンを使用しています。車いすを使っていると、天気の悪いときなどは地面からの跳ね返りなどで洋服が汚れてしまうこともしばしば。はね返り汚れにも強い素材にすることで解決しました。
座りながら携帯もだせるポケット
腿部分についているのはなんとポケット。
通常パンツについているポケットは左右のサイド、またはジーンズなどであればフロントの上のほうについていることが多いですが、このパンツはフロントでもかなり低めの位置についています。
座りながら携帯等の出し入れができるように設計されています。
これは車いすユーザーの「サイドやフロントの上のほうにポケットがあっても、座ったままでは手を入れにくい」という声を反映したものだそう。
車いすでなくとも、パンツスタイルの日にオフィスやカフェのイスにすわりながらポケットに手をいれることを想像すると…たしかに。
縫い目の位置を変えて、おしりに優しく
パンツのおしりの部分にも工夫が。
ふだんはお尻の接地面によく見る縫い目がありません。これは車いすユーザーに多い褥瘡(じょくそう)を防ぐため、座ったときの着地面に縫い目のこないデザインになっています。
褥瘡(じょくそう)は「床ずれ(とこずれ)」とも呼ばれ、座りっぱなしなど、同じ態勢をとり続けることにより体重で圧迫されている場所の血の流れの悪化などによって、皮膚の一部に傷ができたり、赤くなったり、ただれてしまうことを指します。
ジッパーをつけて着脱しやすく
パンツの両足のサイドにある、ひざ横まで大きく開くジッパー。
ファッショナブルですが、これも車いすや義足の人、尿袋(いばりぶくろ)を使用している人も着脱が簡単なようにつけられています。
さらにジッパーの横にある持ち手のようなパーツ、一見すると飾りのように見えますが、これがあることで車いすユーザーが自分の足を持ち上げやすくなるようにつけています。
ありそうに見えてなかなかない、随所までこだわり抜かれたお洋服たち。今後もバリエーションは増えていくそうです。
「いつも着ている服が、実はいろんな人にとって使いやすいものだった」ということがあたりまえになる未来は、もうすぐそこかもしれません。
「TURTLES PLUS(タートルズプラス)」インスタグラムURLは以下から
https://www.instagram.com/turtlesplus?igsh=NjhjMmF5MWxpYmZ1
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