廃棄されるスキムミルクをアップサイクルしてみんなが喜ぶスイーツに。「バターのいとこ」誕生秘話廃棄されるスキムミルクをアップサイクルしてみんなが喜ぶスイーツに。「バターのいとこ」誕生秘話
今ではすっかり有名となった栃木県・那須のご当地スイーツ「バターのいとこ」。スタイリッシュなパッケージに、ミルクの優しいあまみが口いっぱいに広がる人気のお菓子です。
じつはこの商品、バターをつくるときに生まれるスキムミルクをアップサイクルしたものであることをご存じでしょうか。
今回はバターのいとこ誕生のきっかけとなった「森林ノ牧場」で、代表の山川将弘(やまかわまさひろ)さんにお話をうかがいました。
バターのいとこ誕生のきっかけは…
山川さん:バターのいとこは マルシェ、レストラン、ゲストハウスをそろえたChus(チャウス)から始まりました。そこでの仕入れ担当をしていたとき、Chus(チャウス)のオリジナル商品をつくろうと代表の宮本と話していました。
そして、せっかくつくるのであれば、生産者といっしょにつくるお菓子にしよう、ということで目をつけたのがスキムミルクです。
捨てられるものを原料に
山川さん:「森林ノ牧場」は小規模酪農ですが、この規模だからこそ小ロットでの委託製造ができると思い、 2017年にバターの委託製造をはじめました。
ただし、バターの製造にはスキムミルクが大量に生まれます。バターをつくる際にはスキムミルクの活用も同時に考えなければならず、バターをつくる農家にとってスキムミルク問題は深刻です。
そのスキムミルクをアップサイクルして新しい商品に生まれ変わらせることはできないか、そうして生まれたのが「バターのいとこ」でした。
なぜ商品の名前が「バターのいとこ」なのか、気になっている人がいるかもしれません。ここまでお話ししてお察しいただいているような気もしますが…。
お母さんにあたるものが牛乳だとしたら、牛乳から生まれる子どもがスキムミルク、そのスキムミルクから生まれたのが「バターのいとこ」です。
同じ牛乳でも季節によって味がちがう
山川さん:牛乳が好きな人はご存じかもしれませんが、同じ牛乳でも季節によって微妙に味が変化しています。
牛乳の味は牛の種類や生育環境など、さまざまな要因によって決まります。そして牛が食べる植物や気温といった環境の違いも味の変化に影響します。
たとえば夏は暑いので、牛も水をたくさん飲みます。そのため牛乳もサラッとした口あたりになる傾向があります。一方で冬は餌の繊維質が高くなり、それに伴い牛乳も脂肪分も高く、甘みが強い傾向になります。
すっきり、香り高く甘みがある牛乳
山川さん:「森林ノ牧場」は名前の通り、森林のなかで牛が生活している牧場です。山で放牧していてたくさん動くので、牛も筋肉がついています。
ここで搾乳されたお乳は低温殺菌しています。すっきりとした飲みごこちで、香りと甘みがある牛乳です。
また、牛乳のなかの成分を均一化するホモジナイズをおこなっていないため、牛乳瓶にいれたときにクリーム色の乳脂肪(にゅうしぼう)の層ができるのもここの牛乳の特徴です。
森林と酪農と、その先へ
山川さん:バターのいとこだけでなく、牛乳をはじめとするあらゆる乳製品を提供してくれているのが牛です。しかし、たとえば人間と牛がまったくおなじ食べ物を食べて生活していたなら、共生することはできません。
人間がほとんど食べない植物を食べて牛乳を生み、人間はそれを享受しています。それはつまり、牛が自然と人間をつないでいるということ。
だからこそ、森林を活用して牧場をしていますし、付加価値を高めるための酪農をしたいと思っています。
1次産業の農林漁業、2次産業の製造業、3次産業の小売業などの事業とをかけあわせ、新しい産業や付加価値を生み出す取り組みが6次産業と言われています。酪農も6次産業化を目指したいですね。
森林と牛と人をつなぎ、笑顔が生まれる場所
「バターのいとこ」の背景には、消費者はもちろん、生産者や環境と、たくさんの笑顔を生み出す仕組みがあることが伝わってきました。
そういえば、インタビュー中も牛たちが次々に私たちのほうにやってきて「撫でて!」といわんばかりに顔を近づけてきたのが印象に残っています。撫でてもらうとうれしそうで、牛までにっこりしている牧場は初めてでした。
牧場ではカフェも併設されており、ソフトクリームなどの乳製品や地域の農家さんの野菜を使ったランチ、乳製品のお土産なども。那須を訪れる際はぜひ。
森林ノ牧場
住所:〒329-3224 栃木県那須郡那須町大字豊原乙627-114
電話番号:0287-77-1340
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