得意の「箔押し」でバージョンアップしたバリアフリーカレンダー。浮き出し文字にかける想いとは(中)得意の「箔押し」でバージョンアップしたバリアフリーカレンダー。浮き出し文字にかける想いとは(ちゅう)
しんびどう手塚はくおしじょが制作する、文字に触ることで暦を読むことができる「バリアフリーカレンダー」は発売から10年目を迎え、同社が最も得意とする「箔押し」でさらにバージョンアップします。
なぜバリアフリーカレンダーを制作することになったのか、同社で企画・制作をしている手塚 たかつぐさんにお話しを伺ってきました。
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触れてわかりやすく、見て美しいフォントを採用
バリアフリーカレンダーは、「フォアフィンガー」というフォントでデザインされています。同フォントは、フォントデザイナーや視覚障害のある当事者、大学の先生などで構成される「触覚文字フォアフィンガー研究会」が開発したものです。触った時に読みやすいのはもちろん、見た目にも美しいことを目指して作られたといいます。
手塚博雄氏が同会に参加していたこともあり、「このフォントを使って何か作れないか」という想いと「浮き出し文字であれば点字がわからない人でも読むことができる」というアイデアが重なり、バリアフリーカレンダーの制作が始まりました。
数字のカタチを浮き出すことで、視覚障害のある人だけでなく晴眼の人も一緒に使うことができる。そんな多くの人にとって使いやすいバリアフリーなカレンダーであると同時に、毎日の生活に寄り添うものだからこそデザインにこだわったといいます。
見ためにも美しく、触っても明快で読みやすいシンプルなデザインは、以前から同社の加工技術を生かした様々な企画を手掛けてきた、デザイン事務所・ミスターユニバースのアートディレクターである関 ひろあき氏によるもの。2015年版のバリアフリーカレンダーが誕生して以来、現在まで協業で作りつづけています。
得意の箔押しでバージョンアップ
昨年までのバリアフリーカレンダーは、真っ白のものとカラー版の2種類を販売していました。
「カラー版は晴眼者には見やすいデザインでしたが、弱視の人が見るためにはもっと強いコントラストが必要だった」と手塚さん。
しかしデザイン性との両立を考えるとカラー版の改善は難しかったため、真っ白のカレンダー1本に絞ることに決めました。同社が得意としている「箔押し」を施すことを思いつき試作したところ、つるつるとした箔押し部分と紙の質感の違いにより、見た目にも触り心地にも変化がうまれたといいます。
試作の段階で点字関連施設や視覚障害のある人にも確認してもらったところ、「さらに読みやすくなった」とお墨付きももらえたという。
「箔押しは触るというより、目で見て楽しむものという認識だった」と話す手塚さんですが、思わぬところで得意の「箔押し」が役立ったのは、灯台下暗しといえるかもしれません。
緻密な手作業での加工
カレンダーの文字部分の箔押しに使っているのは、クリア箔と呼ばれる透明の箔です。真っ白い紙に透明の箔で箔押しをして艶を出したあと、同じ場所に文字の凹凸を出す浮き出し加工を施します。
職人さんによると「すうミリずれただけで型が壊れてしまう危険がある」そうで、繊細な作業が必要です。位置をあわせて足元のスイッチを押すと、一瞬で点字と浮き出し文字ができあがりました。
続きは明日公開します
「バリアフリーカレンダー2024」の詳細は以下URLから
http://sinbido.co.jp/news/2098
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