これが未来の働きかた。「分身ロボットカフェDAWN ver.β」にいってきたこれが未来の働きかた。「分身ロボットカフェドーンバージョンベータ」にいってきた
東京の新日本橋にある「分身ロボットカフェドーンバージョンベータ」というお店。もしかしたら、聞いたことがある人も多いかもしれません。
ここは、外出困難な人々が分身ロボット「オリヒメ」を遠隔操作し接客するカフェ。パイロットと呼ばれる人たちが自宅から遠隔で操作をしています。自宅といっても都内に限らず、日本国内、さらには海外から遠隔で接客してくれることも。
パイロットの多くは、企画者たちが「寝たきりの先輩」と呼んでいる外出困難な人や寝たきりなどの重度障害をもつ人たちです。そしてこのカフェは、外出ができない人の新たな働きかたの研究や開拓をすることを目的としています。
パイロットは23センチメートルほどのオリヒメを使って遠隔で注文をとり、120センチメートルほどの大きなロボット、オリヒメディーが注文したメニューをテーブルまで運んできてくれます。もちろんただ接客をするだけでなく、パイロットたちと趣味の話でもりあがることも。
2023年5月にリニューアル
2021年6月のオープン以来、2年間で約70人の外出困難なオリヒメパイロット達とカフェでの実験を経て、今ではこの働きかたを導入する企業や自治体も増えているそう。そんな「分身ドーンバージョンベータ」が2023年5月にリニューアルしたそうなので、さっそくいってきました。
不思議な「ある体験」
といってもわたし、今回が初めてではありません。これまでに何度もこのカフェにお邪魔している、いわゆるリピーター。そうなったのも、初めて来店したときのある不思議な体験がきっかけでした。
それはこのカフェでコーヒーを注文しているとき。コーヒーがびっくりするほど高かったわけでも、お財布を忘れたわけでもありません。コーヒーを待っているあいだ、背後に感じるものすごい視線。なんか、ずっと見つめられている感じがしていました。
でも、背後に人はいません。なにこれ怖い…。おそるおそる後ろを振り向くと、やっぱりそこに人はいませんでした。人はいないけど、たしかに感じる熱い視線。
これってもしかして、まさか。お…
視線の原因は、オバケではなくアーモンドのかたちの目を光らせたオリヒメ。片手を挙げてこちらを向いていました。振り向いた私に、やっと気づいた!という雰囲気で「おはなししましょう!」と言いながら。
ロボットに見つめられるなんて初めての経験でしたが、どこかで体感したことのある感覚。たとえるなら、洋服選びをしているときに斜め後ろから店員さんに話しかけられるあの感じと同じでした。
「どんなコーヒーに?」「今日はエチオピアにしました」「エチオピア、私も好きです」「酸味が好きで」「同じです!」とか。お互いコーヒーが好きだったのでややマニアックな話で盛り上がったのですが、あの瞳の奥には確実に人間がいました。だから最初ゾッとしたものの、途中からロボットだということすら忘れていました。それは、向こう側にいるのは人間だから。
あのときオリヒメという分身ロボットから感じた視線、それは人間の視線であり、瞳の向こう側にいるパイロットたちの体温だったのかもしれません。
「感情をもつロボット」をテーマにした作品はたくさんありますが、オリヒメは言うなれば「感情を媒介するロボット」。これが近いと思います。ロボットといえど無機質な感じではなく、そこに人といるときのような温度すら感じるから不思議です。
リニューアルして、どこが変わった?
すっかり話がそれてしまったので、話をもとに戻します。今回のリニューアルでは、これまでのカフェ機能を継承しつつ、より幅広い新たな接客サービスを展開し、体験型のサービスへと変更されました。
まず入口を入ってすぐのカウンターの中からオリヒメディーエックスにお出迎えしてもらえます。ここだけでも「ロボットが接客してくれるカフェに来たぞ!」という感じが味わえてテンションがあがります。さらに「オリヒメパス」と呼ばれる入場チケットを購入するとエリア内でオリヒメパイロット達の接客・案内を体験できるようになっていました。
なお、これまで通り入場料の必要ない通常のカフェエリアもありますが、おすすめはやはりパイロットたちと直接お話できるオリヒメエリア内にある予約制の席「オリヒメダイナー」です。
このほかにも遠隔受付や料理の配膳エリアの拡大、これまでイベントのみだったバーカウンターの営業もスタート、テレバリスタの新サービスなど、いろいろな部分がアップデートされています。
リニューアル後は、店内にいるお客さんも海外のかたが非常に多く、パイロットたちが流暢な英語で接客していることに驚きました。お店もパイロットも、どんどんパワーアップしています。
予約制の席でお食事を
今回は「オリヒメダイナー」で食事をしました。この席は予約制で、それぞれの席にオリヒメが一体ついて、直接パイロットの接客が受けられます。リニューアルしてサンドイッチやハンバーグプレート、寿司プレートまでメニューもさらに充実していました。
今回は撮影も兼ねていたので、「サーモンとイクラの寿司ケーキプレート」と「ドーンアフタヌーンティー」を注文しました。ちなみに「ドーンアフタヌーンティー」はお席のチャージ料金プラス税込み2500円のスペシャルプランです。
「サーモンとイクラの寿司ケーキプレート」には、サラダのほか、パプリカやズッキーニなどのグリル野菜、ケーキのスポンジのようにかたどられたごはんのうえに、お花のようにデコレーションされたサーモンやいくら、スプラウトが色鮮やか。華やかなワンプレートです。外国の人はもちろん、日本人も大好きな味。
「ドーンアフタヌーンティー」は、二段になったプレートに、2種類のパニーニ、ガトーショコラ、コーヒーゼリー、抹茶ゼリー、アイス、クッキー、いちごが添えられた豪華なメニュー。わたしのようにちょっとずつ、たくさんのものを楽しみたい、よくばりたい人にはぴったりです。ふたりでシェアしてちょうどいいくらいのボリュームでした。
ガトーショコラにアイスをのせたセルフアレンジが個人的におすすめ。接客もお料理もどちらも大満足でした。
アクセシビリティもばっちり
最後に触れておきたいのが、お店のアクセシビリティ。
店内に段差はなく、店内の導線や什器、家具類は車椅子ユーザーに配慮した設計になっています。ストレッチャータイプや電動を含む車椅子の入場も可能。人工呼吸器などの医療機器や、電動車椅子の充電用に電源の貸しだしも可能とのこと。
さらに店内にオストメイト、介助ベッド附設のバリアフリートイレも設置されており、えんげ調整食などの食事支援も。来店客の多様性に配慮した設計になっています。詳細は店舗まで。
これが未来のスタンダードになるといいな、と思いながらこの日もお店をあとにしました。次はいつ行こうかな。
「分身ロボットカフェドーンバージョンベータ」店舗概要
営業時間:11時から19時(ラストオーダーは18時30分)
定休日:木曜日 ただし祝日の場合は営業
住所:〒103-0023 東京都中央区日本橋本町3丁目8−3 日本橋ライフサイエンスビルディング3 1F
ウェブサイト:https://dawn2021.orylab.com/
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