大阪・関西万博での実証実験がもうすぐスタート「最新版AIスーツケース」当事者体験レポート大阪・関西万博での実証実験がもうすぐスタート「最新ばんエーアイスーツケース」当事者体験レポート

日本科学未来館(にっぽんかがくみらいかん、以下、未来館)と、一般社団法人次世代(じせだい)移動支援技術開発コンソーシアム(以下、コンソーシアム)は、共同で開発を進める視覚障害者向けナビゲーションロボット「AIスーツケース(エーアイスーツケース)」に新機能を搭載したモデルを開発しました。
ナビゲーションの精度をさらに高めるとともに、人工知能による音声対話などの新たな機能の開発を進め、大阪・関西万博で本格的な実証実験を行うとのこと。前回の発表会レポートに続いて、今回はご自身も中途視覚障害をお持ちの山本祐介(やまもと ゆうすけ)さんに体験してもらいました。
AIスーツケース(エーアイスーツケース)って?
視覚に障害のある人を目的地まで自動で誘導することを目的に開発されているスーツケース型ロボット。これまで、コンソーシアムと未来館が相互に技術協力を行うことで、大型ショッピングモールや空港、未来館などの屋内施設や、未来館から最寄り駅までの屋外空間などで一般ユーザーによるナビゲーション技術の実証実験がおこなわれました。現在は未来館の館内でも利用することができます。
未来館内の常設展「プラネタリー・クライシス」で体験
今回は大阪・関西万博に向けて絶賛アップデート中のAIスーツケース(エーアイスーツケース)で、未来館の常設展示「プラネタリー・クライシス」を歩いてもらいました。

ここからは、山本さんによる体験レポートです。
実際に使ってみて
山本さん:AIスーツケース(エーアイスーツケース)の存在は以前から知っていましたが、想像していたよりも動きがなめらかだと感じました。
僕は屋外を歩くとき、たとえばななめの電柱のような、顔に近い高さの障害物が現れるときがもっとも怖いと感じます。白杖(はくじょう)は足元や低いものの障害物をからだより先に感知してくれますが、高さのあるものには気づけないため避けられないこともあります。
それもあって、外出するときはツバがついたキャップをかぶることが多いです。もし障害物があってもツバが先にぶつかって教えてくれますから。

山本さん:AIスーツケースは本体に光センサー技術のLiDAR(ライダー)がついています。これにより2メートルくらいの高さのものを感知していると事前の説明で伺い、安心して身をゆだねることができました。周囲の状況をこのスーツケースが確認してくれていたし、まわりの動きに臨機応変に対応し、いきなりストップすることもありませんでした。

山本さん:まがるときは、直前にまがる方向を振動で教えてくれました。ガイドヘルパーさんや白杖(はくじょう)が恋しくなることもなかったくらいの安心感でした。欲を言うなら、これでトイレも行けたらいいなって。

山本さん:展示そのものがさわれるようになっていて、たとえばボールの大きさや量でボリュームがわかるようになっていたり、折線(おれせん)グラフもさわることができて、わかりやすい展示だと思いました。聞きのがしてしまった時に再度ガイドを聴きなおせるようになるともっといいなと感じました。
また、今回は人が多いなかでの体験でしたが、グイグイ突き進むことなく、誘導も落ち着いてスムーズでした。スーツケースが予測して誘導してくれているのがわかりました。
動いているときにスーツケース本体がぷるぷる動いて、生き物みたいでかわいいと思いました。もちろんロボットなのは理解していますが、意志をもっているように感じました。愛着がわきましたね。
右利き、左利き対応の秘密
山本さん:今回のアップデートで右利き、左利きに対応するようになっていると伺いました。
普段は右利きで白杖(はくじょう)も右手で持ち、ガイドさんがいるときは左手をガイドさんにあずけています。右手はなにかあったときに前に出せるように、今回、ハンドルは左手で持っていましたが違和感はとくにありませんでした。

未来館:普通のロボットであれば、ロボット本体が障害物に当たらないルートを計算して移動すればよいのですが、AIスーツケース(エーアイスーツケース)はユーザーを安全に誘導することが使命です。つまり、常にユーザー分の安全範囲を考慮して移動しています。
右手で利用するときは本体に対して左側にユーザー分の余裕を持って、左手で利用する場合は本体の右側に余裕を持ってルートを計算しています。右利き、左利きに対応とサラッと書いていますが、じつはいろんな要素がギュッと詰め込まれているんです。
AIスーツケース(エーアイスーツケース)どうしが会話する未来もあったりして
山本さん:大阪・関西万博の会場では室内、屋外のどちらもこれ一台で移動できるそうで、今から楽しみです。会場では複数台が同時に運用されるということは、このスーツケースどうしがすれ違うこともありそうですよね。

山本さん:想像ですが、人工知能による音声対話ができるようになったら、このスーツケースどうしが出会ったときに「あなたもAIスーツケース(エーアイスーツケース)ですか? わたしもです」「あら、ちょうどわたしたちはあちらのパビリオンに行ってきたところです」なんてAI(エーアイ)どうしが会話をはじめたらおもしろいなって。そうすることで僕たち当事者どうしの会話も生まれて、一緒に展示を見に行ったりできたら素敵ですね。
ペットを公園に連れて行くと、ペットどうしで会話している場面に遭遇しますが、あのシチュエーションに似た状況がこのAIスーツケース(エーアイスーツケース)でも生まれるのではないかと思っています。
これからの進歩が楽しみです。
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