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車いすユーザーはふだん、どうやって健康管理をしている?車いすユーザーの本音

簡易電動くるまいすを後ろから見た写真。しっかりとしたタイヤの両輪の間に存在感を放つ大きなバッテリーが2つ。機器の配線コードも複数映っていて一見、雑然とした印象を受けますが、そのなかに垣間見える独自の「美しさ」を感じとる人もいるかもしれません

弊社の親会社であるタニタでは、業務用の体重計のひとつとして“車いすごと計測できる体重計”も販売しています。どのように使われているのか気になっていたのですが、ふだん車いすで生活している人たちはどのように体重管理をされているのか、もっと気になっていました。

今回は車いすユーザーのかたにご協力いただき、みなさんの健康管理方法を教えてもらいました。ここからは車いすユーザーのリアルな声をご紹介します。

 

車いす女子会を開催

いきなりですが、体重ってどのくらいの頻度ではかっていますか?ひと月に一回の人もいれば、健康診断のときにだけ…という人も少なくないのではないでしょうか。わたしは現在、車いすユーザーなのですが、病院での受診時に体重を質問されることも。そのため、だいたい月に一度、体重をはかっています。

ところで、わたしたちのような車いすユーザーの健康管理や体重管理はどのようにおこなっているか、ご存じでしょうか?じつはわたしも自分以外の車いすユーザーの健康管理方法をよく知らずにいます。

そんなこともあり、今回は職場の同期の車いすユーザー4人で、健康管理をテーマに女子会を開きました。今回、“車いす女子会”に参加したメンバーは以下の4人です。

 

ななかさん:10代、自走用(じそうよう)手動車いすユーザー

ひなさん:20代、自操用電動車いすユーザー

いのさん:40代、自操用電動車いすユーザー

わたし:40代、自操用電動車いすユーザー

 

そもそも、手動車いすと電動車いすの違いって…

女子会メンバーの紹介で自ら走ると書く「自走用(じそうよう)」と、自分で操縦すると書く「自操用」という単語が出てきました。車いすユーザーではない人からすると、きっと見慣れない言葉かと思いますので少し補足をします。車いすにはその目的や用途によっていくつかの種類があります。

「手動車いす」には介助する人が後ろから押して動かす「介助用」、自分で動かす「自走用(じそうよう)」があり、同じく「電動車いす」にも介助する人が少ない力でも操作しやすいよう「介助用」と自分で操作する「自操用」があるなど、細かく説明するとそれだけでひとつの記事になりそうなので、今回は割愛させていただきます。ここでは「手動車いす」「電動車いす」ともに、ユーザー自身が操作する場合に焦点をあて、おおまかに説明していきます。

手動車いすは、左右の大きなタイヤの外側に、タイヤよりも直径が小さい「ハンドリム」と呼ばれる輪(リング)がついており、その部分でこぐことで、自分で前後左右に車いすを動かします。一般的に「車いす」と言われたらこちらをイメージされるかもしれません。

手動車いすの写真。自分で操作できるよう左右のタイヤの外側に、タイヤよりも直径が小さいハンドリムという部分があります。また必要に応じ、介助する人が後ろから持って押せるように、背もたれの左右上部に手押しハンドルがついています
手動車いす

 

手動車いすは、こぐために力が必要です。では、力があれば簡単かと言われれば、そうでもないのです。実際に体験したことがある人は、おわかりいただけるかもしれませんが、まっすぐ進むというのは意外に難しいこと。ボートが進行方向に簡単には進めないのと、少し似ているかもしれませんね。

また、平坦な場所でもこぎ続けると体力を消耗し、道に転がっている小石一つにもタイヤはとられます。たとえ、1センチ程度の段差でもぶつかるとかなりの衝撃をうけます。

実際に私も、段差を見るとため息がこぼれてしまいます。これは、手動に限らず電動でも言えることですが、段差を気にして外出を諦める現実もあります。

一方、電動車いすはバッテリーやモーターといった、電気によって動きます。様々なタイプがありますが、多くのものは手元にあるレバーを使って前後左右に方向転換させて動かせるのが特徴です。

電動車いすの一種「簡易型電動車いす」の写真。みためは手動車いすと大きくかわりませんが、手元にバーがあり、このバーを握って操作することで動かすことができます
電動車いすの一種「簡易型電動車いす」

 

電動車いすは筋力が落ちている場合や手の動きにハンディキャップがある人にはかなりありがたい存在です。

今回参加してくれた仲間のなかにも、手動車いすから電動車いすに変わった時の感動を、弾んだ声で話していた人がいました。

わたし自身も同様で、自分の意志で行きたい所に行けるということは、当たり前のようですが、本当は貴重な贈り物なのだと感じています。

その一方で電動車いすは、手動に比べ、スピードやパワーがあるがゆえ、物にぶつかったり、人にケガをさせたりしないためにわたしたちは細心の注意をはらい操作しなければなりません。そのため「電動車いす保険」といって、物や人にぶつかったり、反対にぶつけられた場合にも保障される車の保険のようなものもあります。

 

体重をはかる頻度と場所、方法も十人十色(じゅうにんといろ)

やや話がずれてしまいましたが、ここからが本題です。車いす女子会のメンバーたちは体重をどのくらいの頻度で、どこでどうやって計測しているのでしょうか?

 

いのさん:わたしは気になった時に自宅で測定しています。自宅では、つたい歩きで移動しており、つかまり立ちもできます。一瞬であれば支えなしでも自立できるので、その隙に体重計に両足で立って計測していますが、それもだんだん厳しくなってきました。

ななかさん:わたしはおおむね自宅で計測しています。しかし入院中など、自力ではかるのが難しい体調の場合は手すりつきの体重計を使用しています。体重をはかる頻度も入院中の習慣のまま、週に一回くらいのペースで同じ時間にはかっていますね。わたしは持病の影響で足の長さに左右差があり両足では立てません。でも片足で立つことが短時間であれば可能なので、片足立ちで体重計にのっています。

ひなさん:わたしは定期的に病院に入院しているのですが、入院中、半年に一度はかる機会があります。その際、車いすごと計測できる体重計ではかり、あとで車いすの重さを引いています。これ以外にはかる環境はありません。

 

車いすごと計測できる体重計の写真。測定台はりょうがわ昇降になっています。車いすにのったまま測定台の中央部まで移動し、しっかりブレーキをかけ安全確認後、計測を開始します
タニタの車いす用体重計PW-650A

 

車いすごと計測できる体重計の測定台スロープと車いす前輪の写真。介助する人は昇降の際、スロープの段差に注意し慎重に操作します。段差が少なければ、振動による車いすユーザーへの負担軽減につながります
タニタの車いす用体重計PW-650A

 

わたしの場合、以前は寝てはかれるベットタイプの体重計や、場合によっては介助する人にお姫様抱っこをしてもらいながらはかり、あとで介助する人の体重を引いたりもしていました。

わたしたちが自分の体重を把握する理由として、減少による体力の低下と床ずれ(とこずれ)リスクの危険、反対に増加によってからだを動かしづらくなることでの能力の低下など、たくさんの理由があります。

 

不可能な「現実」と、やってみたいという「希望」

体重のみをはかる「体重計」、体重以外にも筋肉の量・体脂肪率(たいしぼうりつ)や体内にふくまれる水分の量も推定できる「体組成計(たいそせいけい)」もあります。

自立できないわたしのような場合、体組成(たいそせい)の計測はかなりハードルが高いのですが、今回のメンバーたちはどのように捉えているのでしょうか。

 

いのさん:自宅に体組成計(たいそせいけい)もあるのですが、わたしの場合、両足をそろえて立つのが難しく、靴下をぬぐのも億劫なので、はかったことがありません。でももしはかれるとしたら、病院での受診前に心の準備ができるので「筋肉量」を知りたいです。

ななかさん:先ほどもお伝えしましたが、わたしは持病の影響で足の長さに左右差があり、両足をのせることが難しく正確に計測できたことがありません。そのため片足立ちでもはかれたらいいな、と思うことがあります。そしてわたしも「筋肉量」は気になりますね。ふだん運動をする機会があまりなく、筋肉がないと感じることがよくあるので、どれくらいあるかはかってみたいです。

ひなさん:“車いすごと計測できる体重計”はありますが、体組成計(たいそせいけい)は見たことがないので、はかれるなら体組成(たいそせい)をいろいろとはかってみたいです。でも、体組成(たいそせい)がどのようなものなのかをよく知らないからこそ、知ったときの怖さもありそうですね。

 

“靴下をぬぐのが億劫”という人もいましたが、その表現のなかには面倒という意味のほかに、無理な態勢による転倒リスクの回避という理由もあるかもしれません。それくらい、車いすユーザーには靴下の着脱という動作一つとっても、難しいと感じる人もいるということです。

かくいうわたしも、筋肉が衰える持病を持っています。みんなが話しているように、定期的に筋肉量をはかれれば病気の進行具合を知ることができて良いと思う反面、怖い気持ちも正直あります。

両足測定タイプのたいそせいけいの写真。ストッキングや靴下を脱いで素足で本体のシルバーの部分にのります
体組成計(たいそせいけい)

 

「希望」を「現実」に変換しよう

せっかくの機会なので、今回のメンバーたちが体重や体組成(たいそせい)などの計測の際に、ここがもう少し改善されたらうれしいなと思っていることについてもききました。

 

いのさん:一部の体組成計(たいそせいけい)で手に電極がついたモデルをみたことがあるのですが、筋肉量や体脂肪率(たいしぼうりつ)などを、足ではなく手でにぎっただけではかるものがあれば、うれしいです。

ななかさん:両足できちんと立たなくても、体組成(たいそせい)がはかれる機種があれば、ぜひほしいです。

ひなさん:病院での入院中に体重をはかっているので、体重や体組成(たいそせい)が自宅でもはかれるようになったらいいなと思います。できれば手頃な価格のもので、そして筋力もないので、たとえば手をおくだけで計測できるものであれば、なおうれしいです。

わたし:車いすユーザーに限らず誰でも気軽に体重や体組成(たいそせい)をはかれれば、うれしいですね。機器を使う人が合わせるのではなく、機器が使う人に合わせてくれる。何事も「希望」を「現実」に変えるには多くの時間と努力が必要です。でも「希望」を伝えるということが実現への第一歩(だいいっぽ)となるのではと思います。

 

身長はメジャーではかって合算している!?

ここまで体重についてお話してきましたが、ちなみに、身長はどのようにはかっているのでしょうか?

 

ひなさん:わたしの場合、身長はからだのパーツごとにメジャーではかり、合算することで身長をはかっています。しかし、はかってもらう人によって数値がかなりかわってくるため、その時によって誤差が5センチ程度あるのですよね。

わたし:わたしもひなさんと同じように身長を各パーツごとにはかって合算して身長をはかっています。自力では立ちあがれないのと、持病による背骨の変形でからだをまっすぐにすることができないからです。身長をパーツごとにはかって合算して出す方法は理学療法士さんに教えてもらい、以来その方法ではかっています。かなり時間もかかり、アナログな手法なうえ、正確さも時と場合(ときとばあい)によります。しかしそれしか選択肢がほかになく、当たり前に使っていましたが、この話をしたら立って身長をはかれる人が驚いていました。まさに「選択肢」がないゆえの「現実」かもしれません。

 

選択肢をよりひろげ、人生もより楽しくいこう

選択肢がある人にとってはたいしたことないことでも、それに大変さや不自由さを感じる人もいる…体重をはかるということ一つとっても、私たち車いすユーザーは限られた選択肢のなかから、まずどこで、どうやってはかる?ということからはじまります。

きっとそれは体重に限ったことではなく、あらゆるものに言えるでしょう。けれど、だからといって下を向いて生きているのではありません。やりたいことはするし、食べたいものはしっかり食べます。体重もちょっと億劫だけれど、はかるなら1グラムでも軽くしたい…そんな思いも、みなさんと同じです。今より簡単に、楽しく健康管理ができる日がくるのを願っています。

だって、人生は楽しんだもん勝ちですからね!

 

本文ここまで

 

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