夏の日差しと、たまごとわたし。太陽光で目玉焼きはできるのか 2021年夏編夏のひざしと、たまごとわたし。たいようこうで目玉焼きはできるのか 2021年夏編
はじまりは昨年の夏。親会社であるタニタの熱中症計についての調査をしているときでした。毎日あまりにも暑いので、冷蔵庫にあったたまごをひとつ、アルミのバットに割り入れてベランダに置いておきました。どうしてそんなことをしたのか、私にもわかりません。当時の私は「今日ならいけるんじゃない?」とnoteに綴っています。ひとつ言えるのは、その日はかなり暑かったということ。そう、すべては暑さのせいだと言いたいのです。
1回目。暑さ指数28ど、温度36.2ど、自宅ベランダにて(2021年8月5日)
その日はベランダで約さんじかん粘りました。今思うとなんとも無謀な試みだと思いますが、あの日のわたしは本気でこれでいけると思っていたんです。これだけで目玉焼きができてしまったら、それはそれで問題です。若かったな、わたし。案の定、目玉焼きは焼けませんでした。
そしてその後、noteの投稿を読んだ同僚から電話がありました。「中途半端だ」と。「やるならもっと徹底的にやれ」と。疑うことなく「たしかにそうだ」、と思ってしまったのもきっと、暑さのせいでしょう。
2回目。暑さ指数28ど、温度31.1ど、千葉県のウミにて(2021年8月19日)
そして2週間後、私は千葉県のウミにいました。そう、リベンジするためです。もっとひざしがつよそうな場所へ行けば焼けるような気がして。同僚からの指摘を反省し、今度は少し学習して「虫めがね」を携えて2回目のチャレンジです。光をあつめると熱くなるみたい。そんな軽いノリでした。
ところでどうして熱中症計が必要なのかと思う人もいるでしょう。環境省が発表しているもので十分じゃない? と。環境省が発表している数値はあくまでエリアごとの数値なので、たとえいま自分がいるエリアで「熱中症警戒アラート」が出ていなくても、いま自分がいる場所の数値とは異なることはもちろんあります。自分がいる環境の状態をピンポイントで数値で把握するには、熱中症計が役に立つというわけです。
この日は日が傾くまでねばりましたが、この日の収穫は、つれた小さいフグ、そして房総半島のウミを背景にした、やけに気合の入った写真だけでした。
3回目。暑さ指数30ど、温度35.5ど、自宅ベランダにて(2021年8月26日)
気を取り直して、舞台は再び自宅のベランダへ。たしかウミでのリベンジ後、あまりお天気に恵まれなかったのです。このあたりでようやく、気温云々よりもひざしが強い時間帯を狙ったほうがいいことに気づきました。気づくの遅いけど。高さがあったほうがいいと思ってコップの口をおおうようにアルミ箔を広げ、その上にたまごを割り入れ、虫めがねで光をあつめて焼く作戦です。
この日、にじかんはんベランダで粘ってようやくいっかしょ、焼けたような部分ができました。目玉焼きには程遠い、いや、もしかしたら見間違いかもしれないけれど。三度目の正直にはなりませんでしたが、なにか大切なヒントを得たような気が…しなかったかも。
4回目。暑さ指数31ど、温度39.2ど、自宅ベランダにて(2021年8月28日)
ここで諦めないのがわたしです。鉄は熱いうちに打てと言いますが、私のやる気よりも先に夏が終わってしまいます。ここまできたら夏の暑さと私のパッションのアツさ比べです。そんなことを思うのも夏のあつ…なんでもありません。
つまり、強硬手段に出たというわけです。これまで3回、なにげに人目のつかない場所でコソコソやっていたのですが、もうそんな悠長なこと言っていられません。だって夏が終わるから。目玉焼きができない夏、ってなんか悲しくありませんか。
私は部屋から飛び出し、自宅があるマンションの裏道へ。たくさんひざしをあびた地面の上はそこそこ熱いので、上と下からの熱で一気に焼こうと思って。しかも今度はコップではなく、ツナ缶の底に黒いシートを切って重ね、その上にラップを敷いてたまごを落とし、虫めがねでグイっと光をあつめて焼く作戦です。
容器をツナ缶にしたのは、熱伝導率がたかそうな気がしたから。黒いシートを貼ったのは、「夏は黒い服のほうが熱がこもって暑く感じる」と聞いたから。そう、すべては勘でやっていたのです。今あらためて考えると、黒い服のほうが熱がこもって暑く感じる、ということの検証実験を先にすべきだったような気がします。写真で温度39.2どという数値が表示されているのは、きっと熱中症計を温まったブロックの上に置いたからということもあるでしょう。
痛いほどのひざしと紫外線。でもそれ以上に、通りすがりの人の目線のほうがずっと痛かった。夏休みの宿題と自由研究は、いつも夏休みの終わりに駆けこんでいました。あのときよりも今のほうが断然マジメに自由研究に取り組んでいます。しかも自主的に。どうして学生時代にこれをやらなかったのかが不思議でなりません。
そうこうしているうちに、透明な白身部分がわずかに焼けて白くなってきました。少しずつ範囲を広げるために、ちょこちょこ光の先をずらしていきます。よし、いい調子。当時のnoteでも、読み返すのが恥ずかしくなるほどテンションあげあげで書いています。あの日のわたし、よほど嬉しかったのでしょう。途中、日が傾いてきたのでたまごをもって自宅ベランダへ。ついにここでわたしの夏がゴールを迎える…
はずでした。ベランダに移動して間もなく、「太陽光が当たる面積、広いほうがよくない?」と考えてツナ缶からアルミのバットに移し替えたのです。横着したのがよくなかったのかもしれません。
油断して、うっかり虫めがねをアルミのバットに落としてしまい、黄身がクラッシュしてしまいました。狙ってやったと思っている人もいると思いますが、狙ってやるにはあまりに残酷すぎる結果です。凡ミスすぎて悲しくなりましたが、なんだか私らしいといえば私らしいです。ここで、私の夏は静かに幕を閉じたのでした。
人生そんなに甘くない。それがこの夏休みの教訓です。
と、とっても長いまえふりを書きましたが、このお話には続きがあります。そう、リベンジしたのです。今年は果たして目玉焼きはできるのでしょうか? 続きをおたのしみに。
本文ここまで