そうだ、カカオからチョコレートをつくろうそうだ、カカオからチョコレートをつくろう
好きなものは、できるだけたくさんほしい。
ヨーグルトメーカーで無限ヨーグルトにハマり、納豆もできるらしいと知ると納豆の増殖をはかって、花粉症にきのこがいいらしいと聞くと、スーパーに走らずげんぼくを購入して育てた。大好きなコーヒーが日本でも育つことがわかると現地に行って農園を見学し、さらに栽培を試みて…。
昔から、好きなものは“たくさん買う”のではなく、真っ先に“安定供給”を考えてしまうクセがあります。そんなわけで、ある日ふと「チョコレートをつくろう」と思いたったわけです。もちろん、カカオから。
カカオからチョコレートがつくれるキットを発見
いまの時代、ネットで検索すれば何かしらのヒントが得られるもの。そして今や、広大なネットのうみは、きっとドラえもんのよじげんポケットのようなもの。
「カカオからチョコレート キット」で検索すると、やっぱりありました。名前もずばり「カカオからチョコレートをつくるキット」。しかもオンラインで購入できるなんて、便利な時代です。
子どもの自由研究に、バレンタインに…これまでカカオからのチョコレートづくりに挑んだ先輩たちの大奮闘したレビューを読んでいるだけで、あっというまに時間が過ぎていきました。
なかでも気になるコメントが「じんりきでチョコレートを作る事が、暴挙であることを学べました」。
えっ、もしかしてそんなに大変なの? ならばなおさら作ってみたい。いても立ってもいられなくなり、気づいたときには購入ボタンを押していました。わたしも負けていられない。
約2500円でプライスレスな体験を
「カカオ豆から手づくりチョコレート・キット」。価格は2500円くらいでした。
キットの中には、なまカカオ豆80グラム、シリコン製のモールドがひとつ、作りかたなどが載っているブックレットが1冊。フライパン、すりばち、すりこぎ、へら、砂糖は自分で準備する必要があります。今回は砂糖のかわりにきび糖を使いました。
コメントをみると、なんと6じかん以上かけてつくった人も。さすがにそんなにかからないでしょ…と思ったわたしが甘かった。チョコレートだけに、苦い思い出となろうとは。完全にチョコレートづくりをナメてました。
カカオ豆を水で洗って、フライパンでばいせんし、冷ましてカカオの殻をむいてなかの実をとりだして、すりばちでこまかく挽き、フライパンで湯煎しながら砂糖を加えて溶けるまで湯煎してモールドに入れて固める。と、ひとつの文章で書くと簡単そうに見えますが、そんな一筋縄にはいきません。
まずはつくってみる
カカオ豆いりのプラスチックの袋からは、ツンとするカカオの香り。生臭い? 酸味が強い? チョコをぎゅっと濃縮したような、土っぽい香りと言えばいいのでしょうか。とにかく独特な香りです。
カカオ豆を水で洗って、汚れを落として水気をしっかりふきとります。今思えば、この段階から甘かった。もっとしっかり水気をとばすべきだったと思います。
フライパンで弱火で焦がさないようにばいせんします。ほんのりチョコのようなこうばしい香りが部屋じゅうに広がりました。うん、いい香り。
カカオ豆がパチっとおとがしたらひとつとりだし、冷まして豆が半分に割れたら火をとめて冷まして皮をむくのですが、せっかちなわたしはちゅうびにして焦げるまでチョコを食べながらそのときを待ちました。
文章にしても、説明どおりにやっていないのは明らかです。振り返って写真を見てみると、もはや苛立ちしかありません。とにかく余裕ぶっこきすぎです。
どう見ても焦げていますが、これを「よく焼けたな」と勘違いしていたわたし、思いだすと本当に自分に腹がたってきます。このあとひとつずつ殻をむくのですが、そりゃあ焦げてるから殻もむきやすいよね…。ここまでで約90分。
続いて、すりばちでなめらかになるまで豆をするのですが、おおざっぱなわたしにはうまくできず…。なかなか小さくなりません。ほかではさんざん手を抜いたけれど、なぜか「ここでフードプロセッサーを使ったら負けた気がする」と思ってしまいました。
結果、とっても中途半端な大きさまですりつぶして火にかけました。インスタントコーヒーくらいじゃないと溶けない大きさ。写真をみると、「どうしてこれで溶けると思ったの?」と自分にツッコミを入れたくなります。
底が深めのフライパンに水を入れて火にかけ、すりばちごと湯煎しながらひたすらかき混ぜつづけて砕いたカカオ豆を溶かす…はずなのですが、やってもやっても溶けません。ここらへんでようやく自分の甘さに気づくのですが、それでも根気づよくかき混ぜ続けると一瞬、テリがでてきてチョコレートっぽくなりました。
あらかじめ計量しておいた砂糖を投入し、湯気でやけどをしながらもかき混ぜ続け、どうにかシリコンモールドに入れました。
このあたりから気が遠くなってきたので、休みながらつくりました。今だから言えますが、このときのわたしに足りなかったのは「気合い」です。
執念の2回目
1回目を作っている途中からイヤな予感がしたので、Amazonでカカオ豆をポチっていました。それなら失敗するなよという話ではあるのですが、今どきカカオ豆もネットで買える時代なんですね。
というわけで、反省点しかない1回目を踏まえてリベンジです。リベンジといえばかっこいいけれど、つまりは2回目。カカオ豆を洗ったら、しっかりふいて、さらに時間をおいて水分をしっかり飛ばしてかわかします。
フライパンに移し、弱火で焦がさないようにかき混ぜながら火にかけます。音楽を聴いたりYouTubeを流しながらやっていたのですが、このときすでに23時すぎ。
なぜか声を出したくなり、本の音読とか始めるわけです。夜中のテンションって怖いですよね。もちろんシラフです。
いい感じに焼けたので、殻をむいていきます。前回はここでボロッと中身が崩れたりしていたのですが、今回はなかのカカオも豆の形状を保っています。これだよ、これ。やっぱり焼きすぎだったのかもしれません。ここまでで70分くらい。前回よりも20分くらい早く進んでいます。
殻を手でぺりっとむきながら思うわけです。昔の人、よくこれを焼いて殻をむこうと思ったなって…。この時間はまさに虚無。ひたすら自分と向き合う時間でした。殻をむけばカカオがでてきましたが、自分と向き合っても何もでてきませんでした。
こういうのは深夜にやるものではないと、もう少し早く気づけばよかったな。
石臼は発明だ
そして、すりばちの登場です。数粒ずつ入れて、テリがでるまで細かくすりつぶしてから、次のカカオをいれて…。執念ですりつぶしていました。
博物館や資料集で石臼を見たとき「昔の人はなんであんなに重いものをつくったんだろう」と思っていたのですが、今ならわかる気がします。重くても短時間で細かくできる、あれは発明。
カカオをすりつぶしながら、石臼を想う。そんな深夜も悪くないかもしれません。それくらい、すりつぶすのって大変なんだから。
そして、ついに湯煎です。つまり、これまでの答え合わせの時間です。すっているときにすでにテリがでてきたのでこれはいけると思いましたが、いい感じに溶けました。
きび糖を入れてかき混ぜ、モールドにいれて冷蔵庫へ。このときすでに深夜2時20分。
長い長い闘いが、夜更けとともに、静かに終わりをむかえようとしていました。夜明けはもうすぐです。
ついに完成
翌朝。ところどころ粗いですが、しっかりチョコレートになっていました。感動というよりも、ほっとしたというほうが正しいかもしれません。だって2回目だもん。まさか2回目をつくるとは思わなかった。
いつものチョコレートとはちがう、どこか土っぽい香り。お店で買うチョコレートとは香りから違います。この香り、どう例えればいいかずっと考えているのですが、しっくりくる言葉がいまだに見つかりません。
一粒たべてみると、苦味のなかに、ほんのり甘酸っぱさが隠れています。味ももちろん、市販のチョコレートは全然異なります。そういえば、カカオってフルーツなんですよね。
1回目のときのものと並べると、その違いは一目瞭然。1回目は失敗した泥団子というか…どうにかモールドに押し込んで固めた感じが否めないクオリティ。
写真を撮る気力すら起きなかった1回目と比べると、多少のざらざら感はあるものの2回目はだいぶ進歩しました。改めて、市販のチョコレートのありがたみを感じました。
ポイントは水気をよくきること、弱火で焦がさないようにばいせんすること、テリがでるくらいまでしっかりすりつぶすこと。この3つでしょうか。でも、それ以上に必要なのは時間と気合いです。これは間違いない。カカオ豆さえあれば、意外と身近にあるものでチョコレートができることがわかったのは大きな収穫でした。これでいつでもカカオからチョコレートがつくれます。
次回はいつつくろうかな。
dari.K「カカオ豆から手作りチョコレート・キット」商品URLは以下から
https://dari-k.shop-pro.jp/?pid=58724529
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